ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第121章 熱い唇と彼の姿
只熱を出したにしては鈍い身体の動きに納得しながらもぼんやりしていると突然身体を襲った浮遊感
気が付けば私はヒソカさんに抱き上げられていた
「シーツを取り替えなきゃね♥️」
柔らかく降ろされたソファー
普段ヒソカさんが使用しているブランケットを肩迄掛けられて嘗て無くダルい身体は浅い眠りに付く
途切れ途切れ短い夢を見ていると不意に聞こえた「完成♥️」の声に重たい瞼を開いてお礼を伝えた
普段馬鹿みたいに健康なくせにこのタイミングで体調を崩してしまうなんて最悪だし本当に申し訳ないと思いながらも身体は言う事を利かず余計な事はせずに厚意に甘えておくのが懸命だと思った
…………正確に言えば思ったからと言うよりも甘える他に成す術が無いの方が正しい
そのくらい私は衰弱していた
やっとの思いでノロノロと立ち上ったのは大人しくベッドへ戻る為だけど其れすらも途方も無い道程に感じる
平坦なフローリングがまるでぐにゃぐにゃと歪んで見えて三半規管を刺激する気持ちの悪さに見舞われる
ベッドサイドにいたヒソカさんは悠々とそんな私に歩み寄ると
「沙夜子、無理はいけないよ……熱クラゲは神経を鈍らせるから動作も普段通りって訳には行かないんだ♠️」
一歩踏み出しグラリと傾いた私の身体をしっかりと抱き止めてくれた
私は歩く事もままならないらしい
……………本当にお手数ばかり掛けているなぁ………なんて申し訳なさが胸に込み上げて
「すみ………ません……」
精一杯紡いだ声にヒソカさんは「当然だろう?♥️」といつもの調子でウインクを落とした
そしてまた抱き上げられた身体はベッドへと運ばれ
直ぐ傍の椅子に腰掛けてニッコリ微笑んだヒソカさんを確認した後に深い深い眠りの世界へと落ちた私は本当に素敵な夢を見た