ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第120章 コバルトブルーとガウンの姿
私が持って来た荷物は必要最低限の着替えと親方のご飯とオヤツ、そして当然親方も連れてきた
親方のご飯を優先するのは家族として当然で、その為に私自身の荷物が少ないのは必然だ
本当に素敵なお誘いだけど残念ながら私は水着を持っていないし泳げない…………
響いた声は明らかに沈んでいたがヒソカさんは尚も笑顔を見せた
「楽な格好で良いじゃない、何ならボクのTシャツでも着てさ♥️」
「…………良いんですか……?」
「勿論だよ、クローゼットに入ってるの適当に選んで良いからおいで♥️」
「……ありがとうございます!!」
私の声は朝の砂浜に明るく響いた
小ぢんまりとした部屋を振り返ってクローゼットを開けば自身とは比べ物に成らない大きなTシャツが並ぶ
その中からヒソカさんが部屋着的に使っていた黒いTシャツを選び、上を脱いで手早く着替える
寝間着に着ているショートパンツをそのままに着たTシャツはまるでワンピースの様に私の身体を包んでいて其の体格差に感心しながらも
これなら目隠しにも成るし思い切り遊べそうだと思えば自然と頬が緩んだ
………本当は彼も一緒に遊べたなら楽しいのに……と思えば薬指に今は仕舞っている指輪の場所をなぞってしまうけれど
私には待つ事しか出来ないのだ
会いたいと願い募る想いをぎゅっと胸に抱きながら振り返れば窓から淡い光が零れる部屋はまた今日が始まった事を知らせていた
不安や寂しさに溺れる時間も楽しく笑っている時間も平等な速度で過ぎて行く
彼が私の保護をヒソカさんに依頼したのは寂しさに苛まれぬ様に不本意ながらも彼が私を気遣ってくれているのかもしれないと最近思う様に成った
同じだけ彼を待つならば彼を想いながら笑っていたい
彼の無事を祈りながら扉を開けば生暖かい風が吹く
細かい粒子の砂浜は裸足の足跡を残して私は朝陽の温もりに包まれた海へと踏み出した
「お待たせしました!」