第119章 ダイブとヒソカさん

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ！！！！！！！」



漸く喉から溢れた声は野太い雄叫び



…………………私はこんな事故で生涯を遂げるのか…………

彼との再会を待たぬまま…………彼はヒソカさんから私の死を告げられるのだろう…………


彼は理不尽にヒソカさんを責めるだろう…………

どうか無駄に争わないで欲しい

ヒソカさんは何も悪くない

私の不注意から間抜けな死を遂げるのだから…………


家族はきっと私の死も知らぬまま帰らない娘を待ち続ける

どうか…………先立つ不幸を許して欲しい…………



一瞬の内に様々な思考が交差する中近付く海面


しかし私はまだ生きていたいと思っていた

まだやりたい事は沢山あって

話したい事も沢山あって

もう一度彼に会いたい

もう一度家族に会いたい…………





激しい落下に髪が靡き煽られるままもがいた手は歯痒く空を切る





……………あぁ………私は最後まで間抜けな人物だった

笑顔で意図せず崖からダイブするなんて馬鹿としか言い様が無い



涙が頬を流れて風に拐われ抵抗のままに反転した身体は遠く崖の上を映した



唐突に友達が崖から落ちる場面を見せられたヒソカさんも気の毒だが

どうか凡庸な女が生きていた事を忘れないで欲しい………




なんて諦めと後悔が犇めき合う最中





悠々と崖を覗き込んだ鮮やかな髪が見えた

手を伸ばしたって届きはしないけれど絶望の中伸ばした手




ヒソカさんはそんな私を見据えて余裕の笑みを見せると真っ直ぐに私に向かって崖から飛び降りた