ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第117章 似顔絵から見える事
水彩絵の具と色鉛筆が用意されたテーブルに開いたスケッチブックが2つ
「何描きます?」
「お互いを描いてみるっていうのはどうだい?♦️」
「………似顔絵ですか……ちょっと苦手かも……」
「良いんだよ、楽しい時間を過ごす為の遊びなんだから♥️」
「似てなくても怒りません……?」
「そんな事で怒ったりしないよ♥️」
ヒソカさんは首を傾げながらクスリと笑うと、色鉛筆と絵の具どちらを使いたいかと両方を私に見せながら質問した
おずおずと色鉛筆を指差しながら不思議な感覚を覚える
ヒソカさんは優しく丁寧でいて時折割れ物に接する様に優しく瞳を細める
その事に気が付いたのは仮同居が始まってからの事
"一緒にお絵かきしようよ"と言う言葉や色鉛筆と絵の具どちらが良いか、なんて大人の私達が話すには少し違和感のある会話
ヒソカさんは時々こういう言い回しをする人である事は以前から知っていたけれど、ヒソカさんが発すると途端に楽し気な雰囲気に成るのだと気が付いた
下心を微塵も感じない声色にはヒソカさんから漂う余裕が交ざって
子供に向けられる様なわざとらしい甘さは無くなり心地好い柔らかさだけが残る
そして切れ長な瞳、妖艶な唇が弧を描けば悪戯な微笑みが楽し気な色を加えるのだ
まるで"今から楽しい事を始めよう"と誘う様に心底楽し気に言うヒソカさんには本当に彼特有の魅力があった
「じゃあ完成までは秘密ね♥️」
いたずらっ子の様でいて決してぶれない落ち着きに幼さは微塵も無く、アンバランスに見えて全てに余裕が溢れている
色鉛筆を握った私の向かい側でヒソカさんは真剣な眼差しを私に向けた
お互いに似顔絵を描くのだから当然なのだが、注がれる視線に小さく跳ねた心臓
ヒソカさんが私に真顔を向ける事はあまり無い
スケッチブックと私へ交互に向けられる視線が新鮮な気がして妙に落ち着かなかった