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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第114章 ダァさん


_________"




『グァグァ!』



ガラス扉越しの鳴き声に私はコートを羽織る


「イルミさん!来ました!紹介します、ダァさんです!」


「……………。」


私の後ろで訳も解らずにミックスナッツを持たされていた彼はダァさんを見た途端に少しだけ目を見開いた


(…………ふふっ………さては私の話嘘やと思ってたな………?!)


きっと何の反応も無いのだろう……なんて思っていた私にとって彼の些細なリアクションは嬉しいものだった

すっかり気を良くして意気揚々とバルコニーへ出る



「綺麗でしょー!それイルミさんからダァさんにあげてくださいね!」


「………こんなの食べるの?」


「はい!いつもあげてるんです!」


「……………ふーん……。」



何でも知っている彼に私が教える事は少ないけれどダァさんと過ごした日数は私の方が断然長い

私が得意気に言えば彼はじっとダァさんを見据えながらナッツを床に撒いた


「あー………えっと出来れば一ヶ所に………「え?」


「………いえ……何でも!」



私はいつもナッツを一ヶ所に固めて置く事にしている

その方がダァさんも動き回らず落ち着いて食べられるだろうと思っての事だったのだが

私が前もって説明していないのがいけなかった

彼は何も悪くないし、逆に文句も言わずに付き合ってくれているので私は其れ以上何も言わない事にした


ぴょんぴょんと移動してはナッツを食べるダァさん


その愛らしさに頬が自然と緩む



「可愛いでしょ~」


「……………。」



しかし今日はいつもと違っていて






「グァグァ!」


「ん……?え、ダァさん……?」



いつも完食する筈のダァさんが半分以上のナッツを残したまま森へと帰ってしまったのだ


………こんな筈は……普段はもっと仲良しなのだ、と弁解しようと振り向いた先

彼は真っ直ぐに小さく成って行くダァさんを見ていた


「イルミさん、違うんですよ?いつももっとゆっくりしてるし……もっと人懐こくて……」


「………へー」


少し低い声が響いておずおずと彼を見詰める

彼が何を考えているのかは無機質な横顔から読み取れなくて


「いつもとちょっと違ってびっくりしちゃったのかもですね……」


私は少し寂しい気持ちをそのままポツリと声を漏らした


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