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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第113章 チョコレートとチューリップ







どうしても渡したいという訳でも無かったと言えば薄情だけれど元々予定外に作った物

しかしまさか食べられてしまうなんて思ってもみなかった



「………それは……ヒソカさんとクロロさんの…………」



突拍子無く降り掛かった出来事にポツリポツリと漏らした声は虚しく

彼は何を考えているのか全く読めない真っ黒の瞳で私を凝視しながら最後のひとつを口に運んだ



「…………勝手に人の分食べたら駄目ですよね……………」



私の言葉は至極真っ当だと思う

彼の行いは謂わば自分の給食を平らげた後に他人分を横取りして完食しているのと変わらない


しかし何故だろう


私を真っ直ぐに見詰める彼の表情には全くの悪びれも罪悪感も存在せず寧ろ私が間違っているかの様にきょとんとしているのだ


………………困惑、という二文字が脳内を駆け回る


私はこれまで度々彼に常識が通用しない事を学んで来たけれど、ここまで堂々とされると間抜けに開いた口から言葉は出なくなり



「沙夜子に友達なんていないだろ?つまり友チョコなんて必要無い。」


「だから俺が食べてあげたんだ。正直甘い物はもう要らなかったけどバレンタインだから仕方なく……だよ、沙夜子は馬鹿だから分量計算も出来ないのかもしれないけど次からは作り過ぎないでね。」



やれやれといった様子で唇を拭った彼があまりにも淡々と
しかしながら真っ黒の瞳で言うものだから

あたかも彼の言葉が真実だったとでもいう様に静かに頷く他無かった




「それにわざわざ俺が食べるのに包装しなくても良いよ、面倒だから。」


「……………は、はい、そうですよね」





(…………本当に……病んでるなぁ……………)








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