ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第112章 雨から雪に変わる時
教会ではあるが廃墟なので所々荒れているし長い年月人が立ち入った形跡は無いが残留物が残されたこの場所は不思議な雰囲気を持っていた
再び見上げたキリスト像は未だ神聖さを保ち美しい事で時が止まっている様に錯覚させるからかもしれない
一時の緩和に過ぎなくても渦巻いていた不安が晴れて行く気がして
「イルミさんも此方に来て見てください!綺麗ですよ!」
自然と溢れた笑みで彼を振り返れば、彼は未だ中央部に佇んだままで何故かその姿から目が離せ無かった
振り返った途端に僅かに見開かれた瞳は蝋燭の光に揺れて真っ直ぐに私を捉え
その姿がまるで私に見惚れているかの様に思わせたからだった
「………イルミさん……?」
途端にピクリと眉を反応させた彼はすっと視線を落とすと悠々と一歩を踏み出す
そんな彼を前に今度は私が動け無く成っていた
再び交わった視線に鼓動が騒ぐ
先程迄の淡白で何を考えているのか読めない彼は何処へ消えたのか
妖艶な色を湛えた瞳に金縛りに合ったかの様な錯覚をする
長い指がネクタイを外しシャツのボタンをひとつふたつと開いた彼の姿を私は只見ていた
「沙夜子」
静かな教会に響いた彼の声は妖しく色を含み
目の前に迫った彼は私の頬にボタンを外した其れと同じ長い指を滑らせた
突然豹変した彼に戸惑い固まる私の顎は容易く掬われて彼の伏し目がちな瞳に射抜かれる
「しよう。」
言葉の意味を理解するより先に重ねられた唇はいつもの優しい物では無く深く激しいものだった
驚きのあまり見開いた瞳が彼の細められた瞳に至近距離で観察され途端に戸惑いと羞恥が身体を駆け巡る
閉じ込める様に頭を抱えられて身動きが利かずまるで貪り犯される様に彼の舌に翻弄されて行く
彼の舌先が舌の裏をなぞり絡められ歯茎や上顎、口内の隅々を擽り
口の端から漏れるくぐもった吐息と淫靡な水音
その内にも熱を帯びて行く彼の瞳に捉えられて瞼を閉じる事すらもままならず角度を変えては絡む舌
息苦しさから身動いでみても解放されず普段なら一度は離れる筈の時間が経過しても彼は私を離さない