ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第112章 雨から雪に変わる時
彼が何を考えているのか解らない
そんな事はいつもの事の筈なのに私をこんなに不安にさせるのは彼が僅かに見せる違和感からだった
私の呼び掛けに返事もせずに進む彼が連れて来たのは見た事も無い建物の前だった
寂れた塀、手入れされずに荒れた庭から人の気配は感じず廃墟なのだと感じる
「ねぇ……イルミさん………」
彼はまるで私の声が聞こえていないかの様に傘を手放すと年季の入った扉を静かに開いた
訳もわからず立ち尽くす私を振り返りもせずに手を引く彼に誘われ建物内に入る
中央部迄来て離れた手
「…………廃墟ですね」
「………そうだね。」
「………帰りましょ………?」
「……………。」
彼は何故か私を見詰めたまま何も言わず溜息を付くと頭をガシガシと掻いた
動く気配の無い彼
唐突に訪れた沈黙に私はどうでも良い事を口走る
「蝋燭がありますよ……」
「火付ける?どうせ今滅茶苦茶びびってるだろ。」
「び………びびってません!けど付けます………」
彼にポイと投げられたジッポライターは床に転がっていたのか冷たく
私は戸惑いながらも何本も並ぶ蝋燭に無言で火を灯した
………正直廃墟が怖いというのは図星で
何故か立ち去る気の無さそうな彼を説得するよりも工夫して少しでも気分を紛らわせた方が早いと思ったのだが
「………わぁ」
全ての蝋燭を灯して浮かび上がる内装に私はこの時初めてこの建物が何なのか理解した
淡く揺れる蝋燭の灯りに照されて見たのは柱の繊細な彫刻、未だ鮮やかさを失っていないステンドグラス
そして芸術的に美しい大きな十字架のキリスト像だった
白に統一された内装は古びているけれど何故か威厳を失っておらず私は其の重厚な美しさに小さな歓声を漏らした
「イルミさん!ここ教会ですよ!」
「そうみたいだね……住居も一緒だったのかな。」
「え………?」
「足元。」
足元に落ちていたのはシーツの様な布で見渡して見れば奥に階段が見え
他にも様々な物が落ちていて彼の言う住居とはシスター何かが住んでいた、と言う事だろうと納得する