ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第111章 思い出と曖昧な未来
彼は私に想いを告げてくれはしなかったけれど全ての日々の中に確かな愛があったのだと今だからこそ実感する事が出来た
柔らかな表情も意地悪な微笑みも長い髪が流れる光景すらも全てが私を魅了した日々
「お前が帰った後の沙夜子、大変だったよ」
彼の手に傾けられたバカラグラスからカランと氷の涼し気な音が鳴る
私は彼が消えた翌日クロロさん達を訪ねた
そこで形振り構わず泣いたのだ
彼等の言葉が聞こえないくらいに
「泣いて話しにならなくてな。泣き止んだと思ったら放心するしで……」
「………………あはは……」
「……………………。」
チラリと盗み見た彼の横顔は酷く眉が潜められているのに遠くを見詰める瞳は何を思っているのか感情を読み取る事は出来なかった
「………しかしまぁ、沙夜子もよくやるよな」
「………え?」
「…………。」
「いや、普通男追っかけて異世界まで来ないだろ」
「……あー………でもお二人のアドバイスがありましたから!」
「アドバイス?」
不意に響いた彼の声に私とクロロさんの視線が交わった
「あー……ヒソカが色々と、俺は別に何も」
「ヒソカさんは異世界へ来る方法を、クロロさんは危険性を教えてくれました」
「………ふーん。」
「でも随分と時間掛かったんだな」
「あー……私が屍状態から立ち上がるまで時間かかりましたし、家族説得したり先生探したり色々ありまして……」
「……………。」
彼は静かに床に視線を落とすとグラスを傾けた
私はその間の彼を知らない
きっとクロロさんに聞いたってヒソカさんに聞いたって彼は彼のままだったと話すだろう
だけど今私が彼の傍にいられるという事は私達の気持ちはずっと一緒だったという事で………