• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第111章 思い出と曖昧な未来




__________"




すっかり空になったお皿を片付けた後クロロさんは不意に私に話を振った


未だアルコールを傾けてテーブルにはおつまみにオーダーしたサラミやチーズが並ぶ



「………なぁお前らって実際いつから付き合ってるの?」



私は開きかけた唇を閉ざした


それは私の世界にいる時から私達の交際は始まっていた事に成っている、という設定を思い出したからだった

クロロさんとヒソカさんにその設定を宣言したのは彼であり

まだその設定が生きているのか私では判断しかねたのだ


沈黙の数秒


「沙夜子が此方に来てから。」


答えたのは彼だった

そしてその答えにクロロさんは「やっぱりな」と全てを解っていた様に呟きを落とした


「まぁ……あの時の嘘の理由は野暮だから聞かないけど……向こうにいる時から良い感じではあったんだろ?」


彼は真っ直ぐ向けられた視線を受けながら無表情に、しかし肯定する様に鼻で笑った


…………良い感じ…………


彼がそう感じていたとは当時の私は気付く余裕すら無く

"付き合っている"と彼が付いた嘘は他者を近付けない為の線引きであり独占欲の表れだったのではないだろうか………と今に成って思う


私は只彼を想い、張り裂けそうな気持ちを抱き締めていた


彼がクロロさん達に虚偽の交際宣言をしたのは確か京都旅行に行った後



…………つまりその時には私達の想いは………



ドキドキと胸が騒がしい


彼と過ごしたアパートでの日々が鼓動と共に身体を巡る


朝までゲームをした事もあれば

車の中で眠った事もある

浴衣で夏祭りへ行き彼は家業の事を語った

夏の空に咲く花火を見て夜の海へ行った

かき氷は私の中で思い出の食べ物に成っていて

沖縄旅行で彼は私の肌に触れた

だけど途中で背中を向けた彼に私は涙を流した

泡風呂で遊んだ事

彼が連れて行ってくれた温泉旅行

ポッキーの日に意地悪をされた事

二人で見たイルミネーション

虫歯の私を真夜中に歯医者へ連れていってくれた事

彼と見た北海道の雪

彼は私の肌に沢山の痕を残してアパートから消えた



/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp