第109章 出来る彼氏のミッション

其れでも彼女については例外だった

其れは彼女の第一印象が"殺し易そう"だったからなのか異世界での生活が関係しているのか、それとも芽生えた気持ちの問題か

彼女の前で深く眠ろうが何をしようが自身にしてみれば彼女は無力で何の脅威も無いからか


其れともそれら全てが自身の張った気を緩めてしまうからか唯一信頼し心を置いているのは彼女だ



しかし其れは僅かな変化にも揺らぐ不安定な感情だった

外見を気にするという事は少なからず人目に触れる事を意識した行為の様に思う

彼女は部屋から出ないのだから何も気にする必要は無い筈だ


何が彼女を変え、浮き足立たせているのかこの数日間観察を続けてみても全く手掛かりが掴めず次第に膨らむ疑惑


………彼女は無断外出をしているのだろうか


其れも自身の知らない誰か、もしくは彼女を唆す奇術師か



疑惑を晴らすべくホテル各所に配置した監視員の数を増員してみたが誰一人として彼女の目撃報告を提出しなかった




もうもうと渦巻く思考をかかえたまま遂に4日が経過した

彼女は一段と外出向きの格好をしている

だからと言って自身に外出の提案をしたりせず振る舞いは普段と変わり無くそのちぐはぐな言動は益々自身を困惑させた


暗殺を生業とするが故に直接の質疑応答を避ける癖は完全に裏目に出ている

全ての情報は暗に収集し、秘密裏に全てを固めるのが鉄則だが彼女の情報は着飾った身なりと上機嫌という事くらいであった