ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第108章 戯れのヒトコマ
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彼の不意打ちキスに激しいトキメキに見舞われた私はその後落下した地点から動けずにテレビを見ていたのだが
「…………」
「…………。」
彼はコーヒーを片手にキッチンから戻ると私を脚の間に閉じ込める様にソファーに座った
唐突に訪れた近い距離に私はドキドキと胸を騒がせながらもどうすれば良いのか解らなく成っている
……多分どうもしなくて良いのだろうけど彼が何を考えているのか全く解らない
先程の私の行動からイチャイチャしたいのだと察して自ら距離を詰めてくれた………とかだろうか……?
恐る恐る彼を振り返ればマグカップに唇を付けた彼と視線が交わり慌ててテレビ画面を見詰める
恋人なのだからこんなに緊張しなくても良いのだが
大好きという想いが強すぎてどうにもぎこちなく成ってしまう
「あのさ、」
「は、はい!」
間の抜けた声に比べて私の声は随分大きく響いた
彼が何を言い出すのかと床に視線を落としながら待っていると
「沙夜子はもう少し俺に慣れた方が良いよ。」
彼は単調に言った
「………え」
ポカンと彼を見上げれば彼は全くの無表情で此方を見ていた
「その内慣れるかと思ってたけど全くじゃん。」
確かに………慣れとは程遠いが………
なんて困惑していると脇を持ち上げられてあっという間に彼の上に座らされていた
背後から回された腕に抱き締められて心臓が口から飛び出しそうに成る
「このままじっとしてなよ。」
なんて囁きが耳元に落ちて私は肩をビクつかせてしまい
突然彼から接触されると緊張と早い鼓動で思考が巧く回らなくなった
「あ……あのイルミさん」
「何。」
「っ………ドキドキします……」
「ふーん。」
掠れた声が耳の直ぐ近くに聞こえて彼の呼吸を感じる
わざとらしく悪戯な声色に羞恥から流れる汗
これだけ密着しているのだから私の鼓動が早い事なんてきっと彼にはバレていて
「ノルマはこの番組が終わるまでだよ。」
ご褒美的な甘い時間の経過を羞恥と緊張から途方も無く感じたりした