ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第108章 戯れのヒトコマ
薄く血管が浮いた手首は掴んで見ればしっかりとした骨格があり私の手は回らなかった
傍目から見れば線の細い彼だが実は大きな骨格を持っている
私はこの腕に抱かれ、守られているのだと思えば途方も無く溢れる恋しさと安心感
気が付けば私は彼の直ぐ傍にぴったり座って彼のムキムキな腕をベタベタと触っていた
………なんて筋肉だ…………
なんて感心しながらも流れのままに胸元に手を伸ばす
彼は全身を筋肉という鎧に包まれている
腹筋も美しいシックスパックだ
衣服越しで直接目に見える事は無いけれど触れればその形が伝わって彼の逞しい裸体が脳裏を過り顔が熱くなった
チラリと彼の様子を伺う
彼は相変わらず気にする素振りも見せずにスマホを操っていて内心ホッとした
私は今彼に触れているという天国の様な状況に上機嫌に成っていた
たしなめられたりする事も無く彼の魅力を存分に楽しめるのだ
私が次に手を伸ばしたのは彼の頬だった
無表情でいつも変わらない表情を浮かべる顔に触れれば彼の体温が手に伝わってあたたかい
彼が何も言わない事を良い事に両手で頬を挟み込めばスベスベの肌を堪能する事が出来た
自身よりも肌質は硬いけれどやはりふにふにと柔らかい
全身マッチョの彼にも柔らかい場所は存在するのだな……なんて当たり前の事に感心していると
伏し目がちな瞳とバッチリ目が合って途端に顔が爆発しそうに熱くなった
先程まで呑気に動いていた手が停止して沈黙が広がる中
悠々とした所作で私に顔を寄せた彼は淡白な瞳に余裕を滲ませながら触れるだけのキスをした
私は端正な顔が間近に迫っただけで目眩を覚えるのに
ちゅっと悪戯なリップ音を立てた彼に暫く硬直した後に私は盛大にソファーから落下した
「いっ~……」
クスクスと降ってきた笑い声に私は只赤面して俯く事しか出来なくて
「沙夜子は馬鹿だね。」
何処か楽しそうに言った彼に何も言い返す事は出来なかった