ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第107章 暗闇お鍋のヒトコマ
多分思い切りひらめいた顔をしているであろう私に彼は怪訝な表情を崩さずに唇を開いた
「闇鍋って何……。」
未知のフレーズに警戒を滲ませる彼だが質問して来るという事は多少成りとも興味はあるらしい
こうなればどれだけ彼の興味を惹き付けられるかは私の話術次第に成ってくる
私は彼に向き直り出来る限りの神妙な声で説明を始めた
「闇鍋とはですね、それぞれ自分以外には不明な材料を持ち寄って暗中で調理して食べる鍋料理です」
「……不明な食材?」
「はい、例えば具材を5つずつと決めて各自好きな物を購入し、お互いにはバレないようにするんです。更には通常鍋料理には用いらない具材を選ぶのがセオリーです。」
「………絶対不味いじゃん。」
「闇鍋では普段無い組み合わせを楽しみ、新たな発見があるんですよ。食事を目的とした料理というよりは遊び、エンタメとしてのお鍋です。」
「……沙夜子はそんな事が本当にしたいの?」
私の"遊び""エンタメ"という言葉に彼は私を推し量る様な口調で声を漏らした
見ている限り彼は全く乗り気では無い
しかし私が闇鍋を本当に希望しているならば付き合ってやらない事は無い……といった感じだ
すっと細められた瞳が私を真っ直ぐに見据えていて私達の間には暫くの沈黙が広がった
「はい、やりたいです」
彼を真っ直ぐに見詰めて答えた私の声は真剣そのもので
「…………ルールは」
溜め息を付きながらソファーの背もたれに体重を預けた彼は渋々と先を促したのだった
やはり彼は優しい