ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第106章 青と素顔とサイコパス
おびただしく隆起した血管、鋭く伸びた長い爪は何故か私の脳内でUMA的な生物とリンクして
どういう理屈であんなに変形させられるのか最早理解は不可能だが
ぬいぐるみに対して向けられるにはあまりにも禍々しい右手に私はテディベアの儚い未来を予知する事が出来た
彼が一瞬にして目の前から消えて風が吹き抜け髪が靡く
ソファー前で腕を振り上げた彼の姿は目にも止まらぬ早さだったが
気が付く頃には音も無く空を舞うテディベアの首
そして無惨に飛び散る綿を私は見ていた
(……………………怖………………)
ポスンと小さな音を立てて床に転がった生首
バクバクと嫌に響く心臓の音
真っ赤なリボンがまるで血液の様に尾を引き床に伸びていて私は小さな悲鳴を上げる
そんな酷い光景を瞬く間に作り上げた彼は只無言のまま悠々と歩みを進めわざとらしく生首を踏むと寝室に姿を消した
くちゃりと中の綿が飛び出して最早原型を留めない生首を前に力無くへたり込んだ私だが
寝室から再び姿を表した彼はいつの間にか元に戻ったその手に誕生日プレゼントで貰ったシロクマのぬいぐるみを持っていた
私の胸には只困惑が広がる
独占的な嫉妬からの行動である事は解っても今から何が起こるのかが全く読めない………
先程同様悠々と歩みを進めわざわざ生首を踏み締めた彼は首の無くなったテディベアの前で立ち止まった
変な汗が額に浮かぶ中根源的な恐怖に駆られる
カチカチと鳴る時計の秒針がやけに大きく聞こえる最中
彼は首無しテディベアの胴体の上にゆっくりとシロクマを乗せた
……………サイコパス……………
私の頭に過ったのはその一言だった
異様過ぎる不振な行動が何を意味するのか私には解らないが
唖然と汗を流し震える私を彼の真っ黒な瞳と首無しテディベアに乗ったシロクマだけがじっと見ていた
「さ、夕飯にしよう。」
(……………………怖……………………)