ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第105章 奇術師とのお出掛け
「ヒソカさん……?」
薄ぼんやりと暗い鏡の世界に妙に響いた私の声は僅かに震えていた
四方を鏡に囲まれ視線を向ければ合わせ鏡のその先迄自身の姿が映りゾッと鳥肌が立った
………先程迄は平静を装える大人に成長しただなんて思っていたがとんだ勘違いだった
ヒソカさんの存在があったからこそ強気でいられたのだ
にわかに抱いていた心細さや恐怖心が一気に爆発して狼狽える
訳が解らずに同じ場所でモタモタ足踏みしながらも走らせる視線に鏡の中の自分と目が合って私の目にはじんわり涙が浮かび始めた
迷路ではぐれてしまえば再会するのも困難な様に思う
私は最悪この薄気味悪い迷路を一人で攻略するのか………?
今にも逃げ出したい気持ちで一杯なのに頼もしい存在が消えた今、出口なんて本当は最初から無いんじゃないかとすら思えていた
涙がポタポタと地面に落ちるのを見送りながら深呼吸で気持ちを整える
…………先ずは出口だ
ヒソカさんは頭の回転も早い効率的な人の様な気がするし私よりゴールを優先して進んでいるかもしれない
じっと待っていてもヒソカさんが先にゴールしてしまっていては再会なんてそれこそ出来ない
私は涙を拭って一歩を踏み出した
ゴールを目指しつつヒソカさんを絶えず探そうと決めたのだ
やり方は至って単純、進みながら大声で呼び続けるだけ
私は出来るだけ大きな声でヒソカさんの名前を叫んだ
角の度に怯え続けては進むを繰り返しながら前進しているとぼんやり浮かんだシルエットに私は駆け寄った
「………ヒソカさんっ!!!」
…………やっと見付けた…………
この世界で唯一の私の友………!
ゆっくりと振り返るカラフルな姿に私は心底感動していたのだが
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」
あっという間に地獄へ突き落とされてしまった
振り返って私を見下ろしたのはヒソカさんでは無く見知らぬピエロだったのだ