ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第103章 飼い主のヒトコマ
「冗談だよ。」
「……………え、ほんまに?」
「冗談だってば。それよりさ……」
彼のキツすぎる冗談のタイミングが理解出来ずに困惑し
更には事実なのでは無いかと焦る私に彼は続けた
「太ったよね。」
「………え…………」
体重に変化は無い
以前の壮絶なダイエット経験を経て小まめに体重計に乗っているし洋服に何の変化も無いのに…………
「別に太ってませんけど………」
「は?明らかに丸い。」
言いながらも彼の怪訝な眼差しを辿り私の話では無い事に気付く
私の手の中で眠っている親方
………………確かに……………少し…………
「…………ちょっとだけ………?」
私は冷や汗が背中を伝うのが解った
チラリと上げた視線の先に露骨に潜められた眉と呆れた瞳
…………私は静かに正座した
「俺言わなかったっけ、餌は決めた分量を与え、おやつは与え過ぎるなって。」
「…………はい…………」
「俺がいる時は時間迄管理しているし絶対太らせる事なんて無い。つまり原因は沙夜子だ……俺の言い付けを守ってないだろ。」
ゴゴゴなんて効果音が付きそうな圧に視線を泳がせる
…………おやつをねだる親方のキュートさに屈して与えていた…………
ちょっとのつもりが結構………………
「……………すみません………」
「死んだなんて泣く前に健康を管理してやるのが飼い主だろ。」
「………はい………もっともです………」
まさか飼い主としての責任について彼に説教されるとは思っても見なかったが
至極真っ当な説教に私は正座し続けて
「あ………!動いた…………!」
「じゃあ早く暖めたミルクをスポイトで与える。」
「はい!!!」
獣医さながらの指示にきびきびと動きまくった
親方が無事だった事が心から嬉しくて安堵の笑顔を浮かべた私に
「笑うな、話は終わって無い。」
彼は尚も厳しい説教を続けたのだった
(………………イルミさんってめっちゃ良い飼い主さんやなぁ…………)