ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第20章 異世界の山
「親方………ご飯にしよっか。」
電灯も無い場所でへたり込んでリュックを背中から下ろす
気が付けば水分補給もろくにしていない事に喉の渇きで気が付いた
車に轢かれない様に広い道の隅っこに身を寄せて石垣に背中を預ける
ケージを覗けば親方は元気に自身へ寄ってきた
「………ごめんな。今日は一杯揺れたな……」
リュックに持参していたエサをやり減っていた水を補充する
親方は環境変化、はたまた1日中私に連れ回されて平気だろうかと心配していたがもりもり食べる姿に胸を撫で下ろした
「………そうやで、元気でおってな。獣医さんに行かないとあかんなるからな…………………………………………獣医さんとかおるんかなぁ」
なんて呟きに返事は無く
逆に返事があったら心臓発作で絶命するだろうが……
私は親方を眺めながら母に持たせて貰ったお弁当箱を開いた
私の大好物ばかりを詰め込んだ宝箱の様なお弁当
「………いただきます」
浮かぶのは送別会での家族の姿
玉子焼きを一口含んだ途端に予期せず涙がポロポロ溢れた
ふんわり優しい母の味
「…………美味しい"…………」
私はその後も泣きべそをかきながらお弁当を食べた
家族は私の突拍子も無い我が儘の背中を押してくれた
今頃何をしているだろう……
私を酷く心配する母と父の姿を思い浮かべて膝小僧をぎゅっと抱き締めた
背中を押してくれた家族が居るのだから弱気に成っては駄目だ
必ず彼に会える筈だ
「………うあああああああ"………っグスッ…………帰りたいよぉ…………うぅ………」
私はその後しこたま弱音を吐きまくって泣き叫び散らした
しかしそうした事で随分と落ち着き
「………親方……お母さんのお弁当ハク様のおにぎりみたいじゃない?」
千と千◯の神隠しを思い浮かべて笑える元気を補充してふと空を見上げて見れば
其処には街中とは比べ物にならない美しい星空が広がっていた
「………綺麗………」
暗闇に浮かぶ無数の星は強い輝きを放ち今にも落っこちて来そうだなんて考える
彼もこの星を眺めているだろうか
とても綺麗な星空はいつかのプラネタリウムを思わせて
彼とお揃いの空を眺められている事がとても幸せに思えた