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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第102章 眩い朝日







彼女の思考は単純だと侮れば複雑で

複雑だと探れば単細胞なのだとつくづく思い知らされる



「早くしないと気球に乗り遅れる。」



「うぉ、急ぎます!!」



本当に体調が回復したらしい彼女は聞いた事のあるCMの曲を鼻歌で歌いながら身支度を整えた


(俺の不注意で死にそうだったなんて思ってないんだろうな。)




自身の買い与えた物で身を包んだ彼女は寒さを凌ぐ為に随分と着膨れしていた

ボアのコートにマフラーを巻いて鼻元迄顔を埋めている彼女を何かの動物みたいだと思う





「気球……私初めて乗ります!」


「あっそ。」



まだ暗い辺りに浮かんだ色鮮やかな気球を前に彼女は声を弾ませた


しかしいざ乗り込むと自身の手をぎゅっと握り少し表情を強張らせている


「怖い?」


「あはは………ちょっとだけ」


徐々に標高が高く成り空が明るみ始める


実の所自身は初日の出なんて物に興味も無ければ気球にも一切の関心すら持ち合わせていない


……………ただ、彼女の事を考えた時に朝日を見せてやるくらいならと思った


この世界には彼女の世界の様に年越しの文化等存在しない

勿論彼女の家族も存在せず似ている様で全てが異文化だ


いつか彼女はホームシックという心理現象に陥り泣いていた

未だ彼女に掛ける言葉は持ち合わせていないけれど彼女が元の世界を感じられる何かがあればと思ったのだ



「うぉぉぉ高いっ…………」



一層強く握られた手をやんわり握り返してやると少し不安気な瞳が自身を見上げる


「平気だよ。」


流石に落下すれば死ぬ事は間違い無いが。



なんて考えていると目標地点に到達した気球は微調整を繰り返しながら大気に留まり始めた


日の出の時は近い


観光産業として気球を売りにする会社の中から一番高く迄浮かぶ気球を選んだのには理由があった




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