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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第100章 私の誕生日







…………いや………動物とは何者でも凄い勢いで取り囲まれると怖いのかもしれない…………


なんて考えていた矢先


一緒に成って気だるげに取り囲まれていた彼のコートの裾を一匹の羊が噛んだ瞬間だった



「………………っ…………」



彼の纏う雰囲気が無機質から一変し凍てつく様な冷たさを放ったのだ

まるで見えない刃物を喉元に突き立てられた様なゾクリと肌が粟立つ根源的恐怖は全身を包み膝が震える



しかし私よりも素早い反応を示したのは羊だった


彼が雰囲気を変えた途端、一面を取り囲んでいた羊達が弾かれる様に散ったのだ

そしてフロア全体が揺れた





正確には揺れていないのだが



此処彼処から動物達の落ち着きを失ったワイルドな鳴き声が響き渡り共鳴し、フロアを揺らしていた



大人しく眠っていた筈のフクロウや鷹達は広い翼を広げ飛び立とうと必死に羽ばたき

うさぎはかつて見たことの無いスピードで跳ね回り

猫はキャットタワーを駆け回り

犬はキュンキュンと怯えた声を響かせていた

フロア中から響く恐怖の鳴き声は最早断末魔の様で聴覚を支配する中



「………チッ……汚いな。」



ボソリと呟かれた声を私一人が聞いていた


彼が雰囲気を変えたのは瞬きにも満たないほんの一瞬の出来事だったのだが園内は大惨事だ

瞬時に命の危機を感じた動物達の精神状態を考えると気の毒で成らない

なんて考えている今この時も私の手足はガタガタと震え立っている事の方が不思議なくらいで




「怪我してる、大丈夫?」


なんて私の肩を優しく抱いて背中を撫でた彼をゆっくりと見上げる


真っ黒で無機質な瞳は真っ直ぐに私に視線を注ぎ


「しかしうるさいね。」


等といけしゃあしゃあと発言した犯人は更に残酷な言葉を口にした




「うわ汚……顔に糞が付いてるよ。」



私は自分が今どんな顔をしているのか解らないが


ただ瞳から溢れる水が頬を流れていた





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