ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第98章 サービスの正体
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翌日
私は夕飯のルームサービスを堪能していた
とは言えひとりきりで囲む食卓は味気無く、本来ならもっと美味しいだろうディナーも感動が薄い
ペントハウスでルームサービスのコース料理を食べるだなんて庶民な私からしてみれば贅沢極まり無いが
彼が居ないと料理の味が変化してしまう程寂しさを感じずには居られない
彼が居ないからといって料理の味が変わる筈は無いのだが、「美味しい」と気持ちを分かち合えない現状に私は静かにフォークを置いた
「……イルミさん……」
窓の外はすっかり暗くなり街の灯りが揺れている
会社やお店もあるけれどマンションや一軒家に灯る明かりの中で恋人や家族が賑やかに食卓を囲んでいるのだと思うとぎゅっと胸が切なくてどうしようもない
………彼が帰宅して二人で過ごせる数時間の間で共に食事をする事はこの二週間程一度も無い事に気付く
「………イルミさんちゃんとご飯食べてるかなぁ……」
テーブルの傍にある窓から見下ろす夜景を眺めて感傷に浸っていると
突然ノックの音と共に部屋の扉が開き私は勢い良く振り返って、途端に頭上に沢山の疑問符が浮かんだ
「お待たせ致しました、メインディッシュのステーキでございます」
立っていたのが私の頭を過った愛しい彼の姿では無くホテルマンの姿だったからである