ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第2章 やけ酒の1ヶ月
「………おい………いくら任されてるかなんか知らんけど………そんなに空けて大丈夫かよ………」
「………ここの酒は全部私のんや。」
「…………お、おぉ。」
家に帰れば嫌がおうにも彼の面影で溢れていて私はもっぱらマンションに入り浸っている
彼の腰掛けた座椅子には未だ座れないし段ボールも開けない
キッチンに立てばお揃いのマグカップが私を泣かせるし
彼の布団だってキッチリ畳んだまま処分出来ずにいる
イルミさんそっくりイルにゃんに話し掛けては泣き叫ぶよりも人間相手に酒を飲んだ方が余程健康的に思うのだ
「ちょっとは食えって!せっかく買ってきたんやから……」
「…………うん」
広々とした見るからに高級テーブルには不釣り合いなコンビニの焼きうどんに割り箸を伸ばす
「うまいやろうが!」
「………味がせん………」
「味覚まで壊れたんか……」
隣で騒ぐ藤木は甘い物ならとバームクーヘンを差し出したのだがそれを見て涙が込み上げる
「うぅ"…………っ…………」
「……おい!なんや!!!」
そのバームクーヘンは良く彼と二人で食べていたものだった
「…………バームクーヘン……バームクーヘン…………一緒に食べたのに………」
「よし、バームクーヘンは今から捨てよう!………な、ドーナツ食おうな!!!俺とドーナツにしよう!!」
なんて言いながらコンビニの袋をガサガサする藤木は良い奴だ
そしてはたと気付く
(こいつ…………彼女ほったらかしで私に付き合ってたらあかんやろ………)