ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第97章 楽しいソリ遊び
どれだけ滑り降りて来たのかは解らないが明らかに人の気配の無い場所
何処を見ても同じ様な景色が広がる白い森のど真ん中に私達は佇んでいた
様々なニュースが脳裏を過る
…………スキーや登山で雪山遭難
行方不明に成って一週間…………
なんて洒落にならない
「すみません…………」
……………完全に私のせいだ
私の軽率で無能な行動のせいで彼まで巻き込んでしまった
雪山には食料なんて無い
いくら屈強な彼でも平凡以下の体力しか無い足手まといを抱えてサバイバルするのは流石に無理かもしれない
思考が絶望に染まる中
涙で滲む視界に映った彼はシリアスとは遠いポーカーフェイスを貫いていた
まるで私の言葉の意図が理解出来ないとばかりに小首をコテンと傾げる彼に私は涙声を絞り出した
「遭難………私のせいで………すみません」
「俺はてっきりソリ遊びを楽しんでるのかと思ってたんだけど。」
「………………」
「………遭難ね。泣くと体力と体内水分を消費するし、まぁ落ち着きなよ。」
随分と余裕な間延びした声が窮地に立たされている今とあまりにもかけ離れていて涙は何処かへ消えて行く
「夜に成ると冷えるし取り敢えず下山しようか。」
なんて平然と言う彼が神々しい程に頼もしく
大変身勝手ながら彼がいてくれて良かったと心底思ってしまった
もしこの場に私だけが居たならば生存出来る確率は限りなく0だろう………なんてぼんやり彼を眺めていると
「戻るより下った方が早いかな。」
呟きながら徐にスノーボードを装着した彼はサラリと私をお姫様抱っこした
途端に遠い地面に恐怖を抱き彼の首に腕を回せば
「行くよ。」
彼は私を抱いたまま凄まじいスピードで滑り始め
有り余り過ぎるスリルに悲鳴を上げる私に「煩いよ。」と言い続けたのだった