ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第97章 楽しいソリ遊び
並走していた筈の彼の姿は無く背中に感じる気配に彼も板に乗ったのだと気付く
……………何故………………
なんて疑問も目の前に迫る大木の恐怖からふっ飛んで
世界がスローモーションに流れる中
間一髪で避ける様に傾いた板に私達は激突すれすれで大木を横切り
次々に現れる障害物を縫う様に滑走する体験は生命を脅かす恐怖に満ちたものだった
寒さと恐怖で体力が奪われて身体に力が入らない
「…………もう………嫌………」
小さな呟きが漏れた時
ズザザザザザザッという音と共に板はピタリと停止してその勢いに浮いた身体は背後から伸びた腕に抱えられていた
嫌に煩い鼓動は全身に脈を打ち
ヘナヘナと身体から力が抜けて行く
軽々持ち上げられて漸く地面に付いた足は役に立たず、私はその場に崩れた
「………………怖かった…………」
「そうなの?」
単調な声だけが耳に流れてやっと見渡した辺りは人で賑わうゲレンデとは程遠い閑散とした森の中だった
「……………」
「……………。」
放心したままの私、何を考えているのか全く解らない無表情な彼
私は現状を即座に把握していた
…………………これは所謂遭難というやつだ