ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第97章 楽しいソリ遊び
リフトに揺られて再びやって来た山頂
私は先程とは別人レベルのローテンションである
甘い想像と冷たい現実のギャップに心が折れたのだ
キャー滑れない、なんてカップルの声が耳に付いてしまう私はとうとう嫌な奴に成ってしまったらしい
正直めちゃくちゃ羨ましい
私だってあんな雰囲気で彼と楽しいデートにする予定だったのに
彼が不思議ちゃんなのと無駄を嫌う合理的な考えが災いし
悲しいくらい助けて貰えなかった
彼は別段冷たくしたつもりも無いだろうし声色が冷たかった訳でも無い
只単に滑れた方が楽しいだろうとスキーを勧め、歩けないなら板を取れば歩けるだろうと言ったのだ
その証拠に彼は立ち上がる際に身体を支えてくれたり板を交換に行くのにも一人滑り降りたりせずにリフトで同行してくれた
何も間違ってはいないし優しいには変わり無いのだが少し寂しく思った
「行く?本当に滑れるの?」
「はい!大丈夫です!」
彼はひたすらに滑る事を目的とする
スキー場にやって来たのだから間違ってはいない
だけど私は普通のカップルの様なイチャイチャを期待してしまっていたが故に本当に勝手ながら残念に思った
先程とは違い背後を気にしながら滑る彼の背中をスキー板で追う
プロさながらの腕前の彼と平均より拙い私ではどうしてもスピードが合わずに彼は時折ブレーキを掛けている
座っていただけの先程よりは勿論滑れる今の方が楽しい
しかし会話も無く黙々と彼に着いて行くのはなんだか求めていたデートと違っていた
斜面を滑り切り見事なブレーキを決めた彼
遅れて到着した私を彼は無言のまま見下ろし息を漏らした
「楽しくなさそうだね。」
「……え………」
彼は特に不愉快そうだとか怒っているなんて雰囲気は無く単調に呟いた
私は大好きな彼とデートに来ている
私が楽しそうだと言ったスキーデート
彼はわざわざ一式を買い揃えて久々の休暇に私を連れ出してくれた
其れなのに私は楽しそうでは無いらしい
駄目だと思った
私はきっと贅沢に成っている
大好きな彼とせっかくのデート
楽しくない筈が無いのに彼と平凡な恋人らしくイチャイチャしたい……なんて願望が表情に迄現れてしまっていたのだ