ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第95章 支配的愛と彼女のヒトコマ
彼女に贈られた逆十字を指先で撫でながら思い返していたのは彼女の眺めていた雑誌だった
彼女は滅多に物を欲しがらない
欲しいと言い出す物は何故か自身の身に付ける物が大半で彼女本人の物はあまり無い
しかし数日前無言で雑誌の1ページを眺めていた彼女はその目を輝かせ食い入る様に見ていた
其のページに掲載されていたのはアクセサリーで更には指輪、ネックレス、ピアス、ブレスレットと種類があった
彼女は単純馬鹿なのでプレゼントを贈れば外出出来ない不満から一時的にでも気は逸らせる
というのも本音だが…………仕方がないにせよ満足にデートへ連れ出せていない現状に少し申し訳なさを感じている事も背中を押して
暇潰しの品以外にもちょっとしたプレゼントを贈る事にした
せっかくなら彼女の欲しい物をと記憶を蘇らせてみるものの一体あの中のどれが欲しいのかが解らない
彼女が注いでいた視線を思い出しながらも足を踏み入れたブランドは女性向けジュエリーを扱う自身には居心地の悪い場所だった
(………多分あれだよね……)
「今月号の雑誌に載っていたブレスレットをプレゼント用で買いたいんだけど、早急に。」
店員も勿論異性ばかりで場違いにも程がある
手早く立ち去りたい一心で放った言葉に
「申し訳ございませんがブレスレットでは無くアンクレットなのですが………宜しいでしょうか?」
店員がおずおずと雑誌を広げて近寄って来た
見せられたページは確かに彼女が眺めていた物に間違い無くブレスレットだと思っていた物はどうやら別物のアクセサリーだったらしい
「そう、これ。何でも良いから早くして。」
…………アンクレット…………足首に付けるアクセサリーだった筈だ
意味は左右で違っていた事を思い出す
支払いを済ませラッピングの間店先で待ちながら巡らせたのは暗殺時に色を仕掛ける為に学んだアクセサリーの意味
アンクレットの由来は奴隷の足首に装着された鉄環という説がある
奴隷の鉄環が左足に装着されていたことから左足につけるアンクレットは"誰かの所有物である"という意味を持つ
逆に右足につければ奴隷にとって自由な足………つまり誰にも所有されておらず"恋人を募集している"という真逆の意味に成る
彼女がつけるべきは左足
………俺のものである証だ