ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第94章 特別
「沙夜子の家族については条件だから無理してたけどそれも最初だけで、旅行に行った頃にはいつの間にか平気だったよ。多分其れは沙夜子の家族って認識だからだろうけど、いつからかは覚えて無い。」
「………そっかぁ………私嬉しいです………ありがとうございます」
「……?別に。」
昨夜も思った"彼の特別"に私は私が思うよりもずっと前から入っていて
私の家族もまた、無意識的にでも特別だと思ってくれている事が心底嬉しかった
今にも溢れそうな涙は嬉し涙という奴だが泣くより笑った方が良いと無理矢理に海面から視線を上げた先
(…………ミトさんッ!!!!!!!!!!!!!!)
漁港にて談笑する一方的に見知った人物に涙はぶっ飛んだ
「何、どうしたの。」
私の表情が一変したのに気付いた彼は私の顔を覗き込み首を傾げる
「………いえ………知り合いのお義母さん………?に似てる人がいてて………」
声を裏返しながらも精一杯に絞り出した言葉に細められた視線が刺さり肩が跳ねた
「あの女だろ、あれ誰。その様子だと俺の知る誰かと関係があるみたいだけど」
「で、でもほら、私が言った通りあの人はイルミさんの知らない人ってのはほんまでしょ?」
「確かにね………まぁ良いや、他人の家族なんてどうでも良いし。」
港に背を向けた彼は長い髪を潮風に靡かせながら本当に無関心に呟いて
私はその裏にある彼の特別を大切に噛み締めたのだった