ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第94章 特別
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ラガーさん一家と賑やかに朝食を食べた私達は一家の元を後にした
最後迄あたたかい家族に少し泣きそうに成った私に皆は姿が見えなくなる迄大きく手を振ってくれていた
島を出る船の甲板にてぼんやりと港を眺める
「楽しかったです!ありがとうございました!!」
「別に。もう民泊には絶対に泊まらないけどね。」
体験自体は参加してしまえば楽しそうだった彼だが
やはり他人との接触や他人の家、というのが苦手には変わりないらしい
「家族の一員とか何とか言われた時は本当に無理だと思った。」
眉間に皺を寄せて言う彼に苦笑いを浮かべる
……確かに、彼に気安く"家族"というワードを使うのはいけなかったかもしれない
家庭環境故に血の繋がりに強い固執を感じさせる彼だからこそあの言葉が癪に感じたのだろう、なんて考えていると
ふと昨夜浮かんでいた漠然とした違和感の正体を掴んだ
「私の家族は大丈夫なんですか……?」
彼と私の家族が対面したのは彼が私の世界にやって来てほんの数日しか経っていない時だった
私の実家に行き食卓を囲み手料理を食べ、彼は敬語を使い愛想笑い迄披露していたのだ
少々神経質故にラガーさん宅を拒否した彼がやって退けたとはとても思えない程の偉業に今更気付いた
「最初めっちゃ嫌やったんじゃないですか?!私のアパートも!!!」
彼は私の問いにゆるゆると頭を掻くと淡々と言葉を紡いだ
「……沙夜子の場合異世界での拠点に成ったし生活して行くんだから、と思った。それに同居の条件が彼氏役だったから無理しないとね。」
「………えー………そう言えば私の歯ブラシ使いましたよね」
「そんな事もあったね。」
「………い、嫌じゃなかったんですか」
恐る恐る見上げる私にチラリと視線を流した彼と目が合う
「よく解らないけど初めから嫌じゃなかったのかな、沙夜子は。布団も料理も平気だったし……」
「っ~~………!!!」
何気無く自然に伝えられた声は私の鼓動を早くして
涙が溢れそうな程に嬉しいものだった