ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第94章 特別
________"
次いでやって来た牛舎では乳搾りを体験する事と成った
軍手を頑なに拒否した彼が……平気だろうかとは思うが平然とした態度から嫌では無い事が見て取れた
この分だと安心である
………牛と言ってもやはりデカい
背丈は彼を悠に越し、毛色はまさかの黄色と白のマーブル模様だったが優しい眼差しは牛そのもので可愛い
私達はお手本を見た後に各々に牛を宛がわれ乳搾り体験をする事と成ったのだが
………中々に難しい………
立派なお乳に手を添えながらも苦戦する私にお姉さんは
「上の指から順番に下に向かって力を入れるのよ」
丁寧に手を取りコツを教えてくれたのだが
………私にはセンスが無かったらしい
お姉さんはずっと私に付きっきりで漸くバケツの目標印に到達する事が出来た
「すみません、お手数かけて……」
「いえいえ、最初は難しくて当然だからね」
ニコニコと優しいお姉さん
お姉さんの完璧なアシストが無ければ私は途方に暮れていただろう……感謝………
なんて思いながらも彼の元へ行くと響いたのはお姉さんの悲鳴にも近い声だった
「あの!それ以上は搾らないでっ!!」
彼は乳搾り初体験の筈だ
しかしながら目の前の彼は類い稀な才能を開花させたとしか言い様が無い程にジャアジャアと豪快に牛乳を搾り出していたのだ
其の手さばきは見事なものでプロさながらだが表情は無である
バケツに付いた目標の印迄キッチリと牛乳が入ったバケツは実に12個も並べられていて
短時間での搾乳にしては驚異的なハイペースだと素人の私でも察する
「腫れて搾乳出来なくなっちゃうから!!」
唖然とする私の隣で声を上げたお姉さんの言葉に彼はピタリと手を止めて真っ直ぐ此方を見据えると
「どれだけやれば良いか解らなかったから。」
悪びれる様子無く単調に言った
「ごめんね、私の説明不足だけどバケツ一杯で十分なのよ」
焦りを隠しながら話すお姉さんが心底気の毒だが
「本当だよ。先に言わないから……ね?」
なんて私に同意を求めて首を傾げた彼は全く反省していなくて
私は彼から視線を逸らしてお姉さんに謝罪した