ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第94章 特別
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昨夜セットしていたアラームがけたたましく鳴り響き私はのそのそと上体を起こす
…………一度変な時間に目覚めてしまった事で身体がダルい………
其れは彼も同じなのかぼんやりした瞳に似合わない潜められた眉で気だるげに此方を見ていた
「おはようございます……卵取りに行くから用意しないとですよー……」
今日の予定、野菜の収穫と卵収穫体験、パン作り体験、その後朝食を食べて民泊の全てが終わる
私としては後数日くらい過ごしたいので名残惜しいが
「下らない…………体験とか言って金を支払う客を使って楽してるだけじゃん。何が家族だか……馬鹿馬鹿しい、沙夜子はラガー家の一員だから行けば良いよ。俺は寝る。」
彼は不快感を隠す事無く言い放った
無理強いは良く無いと解っていても彼がラガーさん宅に居る以上不参加は気まずい………
皆が本当に良い人だからそう感じる
「ラガーさん宅の一員では無いけど……せっかくやからイルミさんも一緒にしましょうよ……くじら島での思い出が寂しくなります」
私が口にしたのは事実だった
アットホームな温もりに心癒される部分は沢山あるけれど船釣りだって彼がいたから楽しかった
残りの体験だって彼が一緒ならきっと何倍も楽しい筈だと思ったのだ
仕事で多忙な彼との外出はやはり殆どが仕事ありきでデートらしいデートを最近していない
民泊での体験をデートらしいデートと言うかは少し違う気がするが
彼と何かをするというのは私にとって幸せで楽しい事なのだ
せっかく時間があって共に過ごせる時にバラバラだなんて
無理に時間を割いてデートして欲しいだなんて言わない、二人お揃いの楽しい思い出を作れる環境なのに寂しく思った
「イルミさんがいてくれたら私ほんまに楽しいんです……イルミさんが嫌やって解っててわがままですけど………」
未だベッドの上でじっとしたまま布団に視線を落としていると
「………解ったよ。」
彼は溜息と共に承諾の言葉を口にした
ガバリと向けた顔はきっと馬鹿みたいに笑っていて
伸びをしてから此方をチラリと見た彼は
「さ、早く身支度。」
パンッと手を鳴らした