ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第93章 島のお宿と魚釣り
暫く立ち尽くしていた彼だがルンルンで荷ほどきする私を前に諦めたらしい
渋々と荷ほどきする広い背中を見詰める
「船釣り楽しみですね!」
「……………何それ。」
「さっき言ってたじゃないですか!荷物とか落ち着いたら船釣り体験ですよ!」
「俺は行かな「楽しみですね!」
「……………。」
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15:30
私達は漁船に揺られて海に出ていた
お義父さんはこの道40年の大ベテラン
初心者にも釣り易いポイントというのがあるらしい
私には何も変化は感じられないがこの辺りだとお義父さんは船を停めた
「まずは環境に合った仕掛けを選ぶのが釣りのポイントだよ」
沿岸に住む魚の習性に合った仕掛けを丁寧にレクチャーしてくれたお義父さんから竿と餌を受け取り俄然気合いが入る
「今晩の夕飯に成るから沢山釣るんだぞ」
「はい!頑張ります!」
お義父さんからの学びを発揮しようと意気込む私の隣で彼は淡々と餌を取り付けている
ご夫婦に対して未だ無言を貫く彼を前にお義父さんも困惑気味で苦い笑顔を浮かべた
「すみません、人見知りで無口なんです………」
なんてフォローすれば流石は接待慣れしていて、怯む事無く彼に声を掛けてくれた
「そうかそうか!お兄ちゃん針の扱いが上手いなぁ、いい筋だ!」
「……どうも。」
彼はチラリとお義父さんに視線を向けただけだったが不機嫌という訳では無いらしい事が伺えてホッとする
他人との交流、特に仕事以外となると不慣れで当然だ
身分も気にせず彼に語り掛け、好意的に接されるなんて滅多に無いのだろうとこれ迄の彼から想像が出来た
不快感というよりも彼の中では困惑の方が大きいのだろう
和気あいあいと釣りを楽しむ私の隣で彼は黙々と、しかしお義父さんに教えられた通りに針を垂らし続けた