• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第93章 島のお宿と魚釣り






12月07日



『間もなく、くじら島に到着致します。お降りの方はお忘れ物にご注意下さい。』



船内放送の声に私は甲板へと飛び出した

私達が次に目指す目的地はくじら島

HUNTER×HUNTER読者なら知っている!我らが主人公ゴンの生まれ故郷である



「ほんまに鯨の形してますよ!」


「あんまり乗り出すと落ちるよ」



一読者だった私が彼に出会ったのは奇跡としか言い様が無く

更には見知った異世界にいるだなんて本当に不思議だ

そして其れを強く実感するのは、やはり実際原作に登場した土地や建物を見た時だった



数日前「次は辺境の島に行く。何も無い島だから退屈だろうけど。」なんて単調に言った彼の言葉からまさかくじら島に来られるなんて思っても見なかった


彼の口振りからゴンの出身地だと知らないのだろうけど私のはしゃぎ振りから原作で知っているのだと察したらしい


くじら島は温暖な気候に恵まれているらしくコートも不要な程に柔らかな潮風が髪を拐う中私達は流れて光る海を眺めていた


「……コミックに載る様な出来事が起きる場所には見えないけど。」


遠く鯨影を浮かべる岸を見据えてポツリと漏らされた言葉に私は暫く考えた


ゴンの存在は必然的にキルア君と関連し、彼の心の中でデリケートな場所に存在している気がする

特に二人について話した事は無いけれど漫画を読まなかった彼にどんな内容が掲載されていたかを知る術は無い

彼の弟であるキルア君も一度は訪れた島

しかし友達の家に遊びに来ていた……だなんて言うのはどうなんだろうと気が引けて



「ちょっとした小話って感じです!特にイルミさんが知ってる様な人は出て来て無いし!」



私は咄嗟に嘘を付いた

彼の家の事、家族の事はきっと私にも理解出来ず複雑だ

彼にとって愉快では無い過去に過ぎた出来事をわざわざ伝えなくても良いと思っての事だった



「ふーん」



間延びした彼の声が船にぶつかる波音に混ざって溶ける中

私はウミネコへと手を伸ばしていた



/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp