ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第92章 強者と弱者
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私は一人ホテルにあるレストランへとやって来ていた
大理石が輝く開放的な空間は惜し気無く生花が飾られた場所で煌びやかな事この上無いのだが
部屋番号を伝えて通されたフロアは所謂セレブフロアだろう
先程の空間よりもシックで落ち着く……と言うか華やかながら黒や焦げ茶色が基調とされた重厚なフロアに成っていた
所詮私は庶民………いくら照明や色合いを暗くされても落ち着きとは程遠い。
私を落ち着かせるなら色褪せた畳と座布団が一番である……なんて事は今はどうでも良い
予約席には当然二人分の用意がされていて街の一望を望むガラス壁の遠く向こうにはコンクリートの塀が見える
ウェイターさんに一人分をキャンセルする旨を伝えてぼんやりと外を眺めた
………彼には解らない………だなんて言い過ぎだったかもしれない
しかし間違っているとも思えなかった
私は常日頃から貧困や何かで困っている人達を意識している訳じゃない
何の意識もせず、のうのうと生きている
只、テレビなんかでそういうニュースや番組を見た時に考えさせられる事はあった………程度の人間だ
元の世界でも募金に協力する事はあっても自らボランティア活動に参加する、なんて事は無かった
そもそもそんな立派な人間ではない
だけど女の子と会話を交わし厳しい現状を目の当たりにしてしまうと色々と考えてしまったのだ
テレビで見るのと実際に見て感じるのとは訳が違っていた
綺麗事を並べて皆幸せに……だなんて思わなかった、只、あの中の一人くらい………と思ったのが本音だ
私自身に財力は皆無
だけど彼ならばあの中の一人くらい救い出せる力がある
勿論彼の財産だし彼のキリが無いという言葉も納得出来る
しかし直接的に資金を渡すのでは無くても何か方法はある筈で、皆じゃなくても見える範囲だけでも………なんて結局は夢物語なのだろうか