ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第90章 余韻と事実
彼が御就寝だった場所に気持ち悪いニヤけ顔で頬を擦り寄せている場面はバッチリ目撃されていたらしい
布団を被っていた事で醜態を晒す事はギリギリ避けられたが
彼が注ぐ眼差しにこの世から消えて無くなりたいと思う。
しかも私は今素っぴんで目覚めたばかりなのだから当然寝起き顔
間抜けを通り超して気持ちが悪い事は間違い無いと瞬時に悟った
しかし私は普段からこの様な奇行を繰り返しているのでは無くあくまでも彼の愛に触れた翌日であり
その幸せにうっとりしていただけの純粋な乙女である
変質者に向ける様な眼差しで私を見据える彼の姿に変な汗が吹き出した
なんとか誤解を解かなければ…………
「あ、あの別にいつもこんな事してる訳じゃないんですよ?!ほら!なんか幸せやなぁって思ってたまたま布団に埋もれたらたまたまイルミさんが寝てた場所で!たまたま良い匂いがして!!全部たまたま偶然ですからね?!」
私は馬鹿みたいに早口で状況を説明した
兎に角、本当に偶然のタイミングだったのだと伝えたかった
にっこり作り笑いを向ける私に彼はすっと瞳を細めると
「俺が眠っていた場所の匂いを嗅いでたんだ。あ、偶然だっけ?邪魔して悪かったよ。」
全く信じていない口振りで言い放ちシャっとカーテンを閉じてしまった
………………確実にドン引きされてしまった………………
「うあーーーーーほんまに誤解なんですってば!!」
自身の枕に顔を埋めて叫ぶと数秒沈黙の後、再びカーテンが開く音が聞こえておずおずと顔を上げる
「………もう少しで観光地に到着するから起こしに来たんだけど。」
彼は呆れた表情を浮かべて単調に言った
しかし私は多大なる精神ダメージを受けた上に連日のキツイ冗談が重なり彼の心意を測りかねている
勿論もう直ぐ観光スポットだとか起こそうとしてくれ様としていたという事は事実なのだろうけど
純粋な乙女心だったとはいえ、良い匂い等と真っ向から変態発言をしてしまった事には変わり無く
ポーカーフェイスの下では静かにドン引きしているのかもしれないと数秒の内に考え着いたのだ
未だ布団にくるまったまま彼を真顔で見上げる