ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第18章 嫌気がさす1年5ヶ月
ある日また弟が生まれた
教育係に手を引かれ見に行けばキルアと呼ばれたその赤子は父親と同じ銀色の髪をしていた
胸が騒いで仕方なく何時もの様に父親を見上げれば
『当主はお前には重荷だ。キルアが次期当主と成る。お前が手本となりキルアの盾になれ』
地面が割れたみたいに立っている場所が解らなくなった
何の為に努力して何の為に……何の為に何の為に何の為に何の為に何の為に何の為に……
………そうか……俺には才能が無いんだ………
俺の無い物をこの子が持っている
ゾルディックは此れで守られた
喜ばしい事だ……大切な弟……。
其からの日々はゾルディックを守る人間として血反吐を吐いた
其れが良い事だとされているのだから自身の人生は全てゾルディックと共に………
『今の世界での休日は何してますか?』
『え。沙夜子は馬鹿なの?………テレビ見たり外出したり……何時も沙夜子と一緒なんだから知ってるでしょ』
『はい』
目を細めて笑った彼女
ゾルディックなんて存在しない世界で俺は自分を見てくれる人を見付けた
所詮目の前で泣く女も俺をゾルディックとして見ているし
女自身も家の為なら何だってする道具
「やめてくれる?そういうの鬱陶しい」
「………っ………依頼料は振り込んだでしょ!!!」
「返金しようか」
「………お願い………お願いします……一夜限りで良いので………何も無しに帰れません………!!」
すがり付いた女を捻ってはね除ける
「毒物の耐性は」
「………ありません」
という事はあれだけ蔓延していた媚薬は確実に回っている
厄介にも程がある