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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第89章 彼の波に溺れる






黒いロングコートが風に靡き彼の威厳ある佇まいに近寄り難さを感じるがその実優しい人だ



「この草、沙夜子の世界のタンポポに似てる。」


「そうですね!こっちの方がおっきいですけど」


彼の顔程の大きな綿毛はタンポポに似ている


彼は傍で風に揺られる綿毛の植物を手折るとじっと眺めた後にやんわり掌で撫でた

ふんわり形を変える植物が気持ち良さそうでつられて私も手を伸ばせば指先に柔らかな感覚が伝わり小さな歓声を上げる



「気持ち良いですね~」




彼は大きな瞳をクリクリさせていて何処と無くあどけない表情に自然と頬が緩む




「吹いて良いですか?」


「良いよ。」



私は幼い頃タンポポが好きだった

道端に咲くタンポポを良く吹いて綿毛を飛ばしていた


息を吸い込んで思い切り吹いたが異世界のタンポポは少し綿毛を揺らしただけだった

何度も何度も吹き続けるが大きい分タンポポよりもしっかりとしていて私の息程度では全く飛んで行かず



「俺が吹く。」


彼の言葉にじっと様子を伺っていると微動だにしなかった綿毛はたったの一吹きで空へと舞い上がった

彼は以前一吹きで浮き輪を膨らませていたし平凡な私の肺活量とは比べ物にならない威力なのだろう

青々とした空をふわりふわりと舞う綿毛を視線で追い掛けた彼はクリクリの瞳でその様子を眺めていた



まるで動物の様な愛らしさに笑みが漏れて

彼の一番傍に居られる今この時にじんわり幸せを感じる



「結構飛びましたね!」


「そうだね」



他の観光客が騒がしく声を弾ませる中私達は静かに湖を眺めていた




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