ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第88章 魔王の森
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21:13
夕飯を済ませた私達はテレビも何も無い馬車で時間を持て余し
普段よりも随分と早い時間に彼はシャワーを浴びると言ってシャワールームに消えた
「…………」
山間の途中で停車した馬車
どうやら夜間は前進を止めて休憩を取るシステムらしく私達の馬車を操っていたオジサンは待機用の馬車へと帰って行った
前進を止めた車内には静寂が広がり只時計の秒針だけが耳に付く
大きな窓からは相変わらず薄気味悪い森林が一面に広がりゾワリと鳥肌が立った
怖いのならば見なければ良いと思うのだがこの馬車は如何せん窓が其処ら中にある
方向を変えても視界に暗闇を捉えてしまい気になるのだから視線は自ずと向いてしまうのだ
………私の脳内には先程からエンドレスリピートで魔王が流れ続けている
大体彼は昼間にこの山を魔の入り口なんて言ったのだ
人は自力で山越え出来ないのだと………
(魔の入り口って………絶対あかんやつやん………)
本来人が踏み入れない場所ならば踏み入らない方が良いのでは無いだろうか…………?
夕飯時は漠然と恐怖していた森が段々と本格的に怖く成って来た
以前キャンプした森でのトラウマも相まって大好きだった筈の動物にすら私は怯えを感じている
元の世界でならワクワクのナイトサファリも異世界では自殺行為に近い
その証拠に本来草食で愛らしい筈の馬ですらあの威力………昼間でも強烈なのに夜に見れば化け物と見違う事間違い無しである
なんて考えながらもじっと窓から視線を外せずにいると突然漆黒の中で何かが動いた気配に肩を盛大に跳ねさせる
「…………っ………!?!?」
ガタンと震えた椅子は私の身体の振動からだが
そんな事よりも私はぶつけようのない苛立ちに襲われていた