ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第88章 魔王の森
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辺りを暗闇が包む
陽が落ちるのが随分と早く成ったとは言え窓を流れる景色は深夜とも取れそうな漆黒だ
ガタガタと揺れる車内で夕飯の準備に取り掛かったは良いものの
でかでかと設置された窓の外が気になって仕方がない
私達の馬車を動かしているのは前方の御者台に乗車した中年男性だ
その姿は見えないがリビングルームに付いた小窓を開けば会話が可能らしいがそんな事はどうでも良い
赤いカーテンが揺れる小窓の向こう、男性はこの暗闇の中外にいるのだと思うとゾッとする
後方からは男性と交代する為に走る休憩用の馬車、数名の御者が待機しているらしいのだが
その予備の馬車が照らす灯りに闇を深める森が浮かび上がり酷く不気味なのだ
只でさえ揺れる車内に手元が悪く余所見していては怪我をしてしまう………なんて思っても
漠然とした恐怖を前に私は視線をチラリチラリと窓に向け続けた
人間は恐ろしいと本能で危険が無いか確認しておかなければならないように出来ているのかもしれない
今の私が正に其れで
特段何かあった訳でも無いのに私をそうさせる森はやはり其れだけ不気味なのだ
ゆらゆらと揺れる光りに何かが身を潜ませているのでは……なんて恐ろしい想像に勝手に追い込まれて背筋がゾクリとした
「イルミさん………起きてますか……?」
「………起きてるけど。」
「起きててくださいね!」
「………うん。」
彼の存在を確認しながらも随分と気を取られ作った夕飯をテーブルに運ぶ頃にはキッチンに立ってから実に二時間の時が過ぎていた
恐怖故にじっと森を凝視し過ぎた様だ
揃って いただきます と手を合わせた後、聞こえて来るのは大きな蹄の音と車輪が悪路を進む音
「…………イルミさん」
「何。」
「魔王って知ってますか……?」
「ドラ○エのラスボス?」
「違います……学校で習う音楽なんですけど……何とも不気味でね………」
思いの外真剣な声が響いた