ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第87章 馬車で行く
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私は馬車の待ち合い室にて彼を待っているのだが
場違いな雰囲気に緊張して固まっている
待ち合い室と言ってもシャンデリア輝く上質な内装で私の他に待っている数人も皆一応に裕福そうな身成をしているのだ
私も身成だけ言えば彼の計らいで随分と優雅だが根っからの庶民気質は中々抜ける物では無い
彼から聞いた前情報によると目的地は随分と豊かな国らしく入国する為の馬車を借りられるのも富裕層のみらしいのだ
他、馬車に乗る方法として入国せずに観光だけで引き返すツアーも人気があるそうだが受付にてチラリと見えたお値段はお財布に優しく無かった
従って入国すると成るとかなりのお値段なのだろうと容易に想像出来るが全く気にも止め無い彼は流石としか言いようが無かった
妙な緊張感に背筋を伸ばしたまま固まってどれくらいの時間が過ぎたのか
アーチ状の扉が開いて姿を見せた彼に視線を奪われる
黒のロングコートを見事に着こなし悠々と歩みを進める彼は周りの物全てを霞ませてしまう程に優雅だった
長身が故に似合う長い丈がスラリとした体格を際立たせ凛々しくそして何処か漂う色気すらも美しく常軌を逸する程の完璧さに目眩を覚える
そんな彼が私の前に立ち止まり腰を折って手を伸ばす
「行こう。」
サラリと襟元を滑る黒髪、伏し目がちな瞳は真っ直ぐに私を捉え
薄い唇から発せられた声すらも酷く甘美で途端に頬が熱く成るのが解った
そんな私の反応にふぅっと息を吐きながらも有無を言わさず手を取った彼に鼓動はバクバクと音を立てた
「真っ赤に成ってる暇は無いよ。」
なんて呆れ声を漏らす彼に着いて行くだけで私は精一杯なのだが
チラリと寄越された流し目とバッチリ視線が交わり心音が耳にも煩い