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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第85章 白い景色と幸せ






私達はA5ランクの肉料理に舌鼓を打った

昼間あれだけ食べたのに物が変われば全然食べられるのだから人間とは不思議である



そして昼間の希望通り私達は本館の露天風呂前の暖簾で別れて湯を堪能していた

キンと冷たい外気との温度差で湯煙が立ち込める露天風呂から望む景色はやはり白に染まった美しい物だった

本当に幸運な事に私の他に人は居らず風情ある庭を独り占めにする贅沢に浸る

本当に広々と取られた庭は所々薄くライトアップされていてぼんやり浮かぶ雪が繊細に輝いていて
硫黄特有の香りも気分を上げてくれるし寒い季節なのもあり長湯出来そうだ


一頻り庭を眺めて何気無く見上げた夜空に声が漏れる


チラチラと淡雪が舞う夜空に大きな三日月が浮かび辺りを照らしていたのだ

暗闇に浮かぶ月灯りに反射して降る雪の色が浮かび幻想的な世界に幸福の溜息が漏れた




「ふんふんふ~ん♪」


上機嫌で鼻歌を歌うくらい許して欲しい

なんてったって極楽の湯を独り占めしているのだから


ご機嫌なまま鼻歌を歌い石の上に積もる雪に手を伸ばしたその時




「沙夜子って独りでも楽しそうだよね。」


竹造りの壁に隔てられた其の向こうから愛しい声が聞こえて心臓が跳ね上がった


「イルミさん?!」


馬鹿みたいに裏返る声がやけに響く


どうやら露天風呂は男女隣合っているらしく私の独創的な鼻歌は全て筒抜けだったらしい

途端に頬がカッと熱く成ったが彼からは見えはしないので平静を装う


「貸し切りなんです!めっちゃラッキー!」


「こっちも貸し切り。」


「ほんまですか!!ラッキーですね!」


「うん。」



何だか不思議な気分だ

大好きな声だけに耳を傾けて言葉を交わす


壁を隔てた先に彼が居るのだと考えれば瞬間にドキドキと胸が騒がしく高鳴った

互いに何も身に纏わず湯に浸かっている今この時に会話を交わす事が本当に不思議で

そして同じ時を過ごしているのだと思えばとてつもなく幸せを感じた



「綺麗ですね」


「そうだね。」


「…………幸せ過ぎて死にそうです………私、イルミさんと一緒に過ごせてめっちゃ幸せです」




湯気が昇る先を見詰めて空を見上げながら発した言葉は本心で


チャプチャプと水音響く夜空に「俺もだよ」と愛しい声が聞こえた気がした



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