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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第85章 白い景色と幸せ







私達は漁港近くの観光客向け市場にて昼食を食べる事に成った

なんでも宿で仲居さんにオススメの店を聞いた所、海産物が名物のこの辺りでは此所なら間違いないと言われたそうだ


「そんな事まで……!ありがとうございます!」


「別に。」


私が車でぬくぬくと彼を待っている間、彼は大量の荷物を運び、手続きを済ませ更には昼食の事迄気にかけてくれていた事に今更ながら激しい感動を覚える


彼は以前買い物すら自分でしないと話していたし移動は自家用車に運転手付き………

それもその筈だ

彼が生まれ育ったのは裏社会は勿論、この世界の一般人迄誰もが皆知る超一流の名家で

彼はその家の御子息で長男様なのだ


きっと本来なら荷物を自分で運ぶ事等無いだろうし自ら昼食の店を聞き込む事も無くプライベートで何時間も車を運転する事も無い


そして彼が自ら他人の為に物を選びプレゼントするなんて事も無くて


…………こんな何の取り柄も無い私だが彼に愛されているのだと不意に実感して泣きそうなくらい嬉しく成った


本当に些細なそれ等がどんなに凄い事なのかという事を強く噛み締め、真新しい手袋越しに彼の大きな手をぎゅっと握る




大きな倉庫を改装した様な場所には今朝引き上げられたばかりの新鮮な魚介類が並び、お土産としても購入出来る様に成っていた

その隣に設けられていたイートインスペースでは購入した海鮮を丼にしてくれるサービスがあり私達は各々好きな具材を選ぼうと活気付いた店を見て回っている

大きな生け簀には活きの良い魚が泳ぎ艶々と輝くお刺身や貝が魅惑的だ


「あー何食べるか迷います!」


「…………。」


ワクワクと弾む胸をそのままに彼を見上げれば彼はクリクリの瞳で辺りを見渡していた


………そう言えば彼が私の世界に居た際この様な場所に行った事は無く彼はジャポンにもあまり来ないと話していたし…………



「………イルミさんこういう所でご飯初めてですか………?」


「うん。」


彼はコクリと頷くとクリクリの瞳で真っ直ぐに私を見下ろした後に小首を傾げた


「食材を選んだら食事出来る所で調理してくれるの?」



…………滅茶苦茶可愛い……………



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