ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第84章 雪の日の温もり
妄想世界に一時間も浸り最早トランス状態だったのかとも思える諸行に自分で引いてしまう一方で
彼と折角のドライブ中なのにもっと景色を楽しみ、会話を交わしていたかったと後悔が溢れた
そんな私を真っ直ぐに見据え気だるげに髪をかき上げた彼は然程気にする素振りも見せずに淡々と声を発した
「別に、大体何を考えてたかは想像出来るし。……其れより、チェックインして荷物を置いたらそのまま外出しようと思ってる。手続きしてくるからこのまま車で待ってて欲しいんだけど。」
「…………あ、はい、わかりました」
「鍵、掛けるんだよ。」
「はい」
大量の荷物を抱えて(大半が私の物)素早く車を去って行く彼の背中をぼーっと見送る
私が何を考えていたか想像が付くという発言に酷く動揺している内にいつの間にか車で待機する事に成っていた
彼が私の妄想を知る事なんて不可能だが………顔に出ていたのかも………なんて考えながら彼が消えた方向をぼんやり眺めていたのだが
「……………おぉ」
停車した車窓からの景色は先程見た山間とはまた違った景色に変化していた
山間にはまだ新雪を思わせる量の雪が積もっていて快晴の空から太陽に照らされて一面の雪が青く銀色にキラキラと輝いていた
しかし今見える景色は歩道を避ける様に深く降り積もった白、重く低い雪雲から大きくも淡い牡丹雪がしんしんと落ちて来る光景だったのだ