第83章 夕焼ける道

「イルミさん、どっか行きたい所とかあります？」


「別に。沙夜子は？」


「……やっぱり折角着物やし綺麗な和風の所でイルミさんの写真撮りたいです！！」


「……………。」



彼は私の言葉に呆れ顔を浮かべながらも顎に手を当て考える様な素振りを見せた

異世界のこの場所で私には土地勘等皆無な訳で静かに彼の様子を伺っていると


「……確か昨日貰った地図にこの辺りで一ヶ所だけ印が付いていた。……其所、行ってみる？」


彼は単調に言った

今私達の手元に地図は無い

更に昨日地図を見たのは夕方にぶらりと出歩いた短時間の内一回のみである

其れなのに彼の頭には地図が鮮明にインプットされている事に感心を通り過ぎて感動してしまう

彼は本当に頭の良い人だ……

更に見目麗しく完璧な容姿、常人には持ち得ない雰囲気、紳士的な気遣いや振る舞いは上品で何処まで完璧なら気が済むのだろう



………そんな彼が……こんな馬鹿な私を恋人に選んでくれた事

そして今私の我が儘に付き合ってくれている事がとんでも無く贅沢で胸がキュウっと温かく成った



「どんな所でしょ、楽しみです！」