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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第83章 夕焼ける道






確実に脈を上げる鼓動に先程迄の迷いは無い


私を壁と逞しい胸板の間に挟み込みながらも悠々と此方を見下ろす彼の表情にクラクラと目眩を覚えたからだ


…………完全に騙された………


彼は本当に意地悪な人だ……………



鏡で確認した際に下着を着用しているか否かなんて解りはしなかった

彼の事なので肉の動きで解ると言うのは本当の事なのだろうけどそんな物は些細な事で

逆に彼でなければ気付きはしない程の事だったのだと思う


…………彼は微塵も不機嫌では無かったのだ



私を見下ろす彼の口元が悪戯な笑みを浮かべ唇を開く


「……なーんて、嘘だよ。」


伏し目がちに淫靡な色を湛えた瞳が私の瞳を射抜いて一際心臓がはね上がった


指先が頬を滑り顎を掬うと真っ直ぐに落ちた視線と視線が交わり
サラサラと首元を擽る彼の髪の感覚にその端正な顔立ちが随分と近い事を教える


瞬きに満たず伏せられた睫毛が影を落とし、その美しさに見惚れている内に唇と唇が柔らかく重なった


そっと髪を撫でる大きな手が心地好く心臓が破裂しそうに煩い

優しく柔らかく体温を伝えるだけのキスを三回繰り返した彼は不意に舌先で唇の隙間を割り入った

先程迄優しい手付きで髪を撫でていた筈の大きな手が頭を押さえ付けて動きを拘束し、絡まった舌が翻弄される


「………んんっ……」


鼻に掛かった吐息が漏れ出て僅かに開いた瞳に愛欲的な熱を籠らせた彼の瞳が映った

唇からどちらの物とも解らない水音が淫靡に響いて力が抜けて行く

そんな私を支える様に回されたもう片方の手は力強く腰を抱き寄せた後に着物越しにお尻を撫でた

其だけで甘く痺れる思考は熱に浮かされ何度も角度を変え舌を絡ませる彼に必死でしがみ付く

呼吸がままなら無い息苦しさに涙が滲み胸板を緩く叩くと彼はすんなり離れた


「はぁっはぁっ………」


荒い呼吸を繰り返し壁伝いにズルズルとへたり込んだ私を悠々と見下ろした彼は



「行こうか、時間が無くなる。」


先程迄の悪戯で淫靡な雰囲気をガラリと変えて普段と変わらない淡白な声色で言った


バクバクと脈打つ鼓動が耳に煩く

きっと私は馬鹿みたいに真っ赤な顔をしているだろう


彼からのキスに舞い上がり、高揚する気持ちと彼の雰囲気から勝手にその先を思ってしまった勘違いに羞恥で俯いてしまう



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