ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第82章 負傷から
私は寒さから生理的に身体が震えてしまっただけで自らの意思でブルブルと震え出した訳では無い
自分の意思と身体が反する動き………例えばしゃっくりなんて出てしまえば連続で打たれ続ける事に成るのだろうか……?
その場合しゃっくりで私が打たれている間誰かが自分の意思で身動ぎした場合は見逃される事に成る
そんなの不公平で理不尽では無いだろうか…………
再びポンっと肩に木の板が当てられる
気が付けば私は「うーん……」と唸り声を発してしまっていたのだ
バシンッと背中が叩かれて一礼する
……………何故私は叩かれた事を然も有難い事の様に頭を下げているのだろう………?
自己を見直すなんて事を忘れてぐるぐるぐるぐると考え込む内に私は随分とぶたれてしまった
背中が痛い………勘弁してもらいたい…………と心の中で懇願し続け
途方も無く感じた苦行は終わりを告げた
私の背中をぶった人物がどんな人なのか……チラリと後ろを見遣ればまさかの宿坊の女将さんが木の板を持ってニッコリ笑っていて私は詐欺にでも合った気分だった
徳の高いお坊さんならまだしも女将は仏教の何だと言うのだ!!!
何を基準に私ばかり叩いていたのだ!!!!
それも結構な力だった…………
有難いお寺の修行でこの世の世知辛さを実感した私は隣の彼に視線を向けて静かに微笑んだ
(…………イルミさん寝てるやん……………)
「…………あの、終わりましたよ……」
密やかに語りかけながら肩を緩く掴んだ瞬間
「いだだだだだだっ!!!!」
彼は目にも止まらぬ速さで私の手首を掴み捻り上げたのだ
私の野太い悲鳴に悠長に此方を向いた彼は僅かに目を見開くと私の手首を解放した
眠っていようとも警戒を怠っていないのは十分に理解出来たが背中をぶたれ手首を強く捻られ散々な仕打ちに私は泣きそうに成った
「………ごめん」
なんて心配気に顔を覗き込む彼には勿論悪気は無かったのだろうし
私は涙ぐみながらも懸命に笑顔を浮かべた
「大丈夫ですよ"………」
「…………絶対嘘じゃん。」