ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第82章 負傷から
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私達は再び素材の風味豊かな精進料理を食し
部屋の炬燵に入り浸っていた
先ず早朝の寒さが尋常では無いし決して嫌という訳では無いが進んでお勤めに参加した訳でも無いので体力が大幅に削ぎ落とされた気分だ
机に力無く項垂れ熱いお茶を啜る私とは相反して彼は至って通常運転で
大きな瞳で昨日貰った地図を裏返し眺めていた
………………いや……………通常運転では無い……………
キラキラ輝く瞳は好奇心に溢れ静かにワクワクしている様に見える
きっと他人から見たなら無表情だと片付けられるのだろうけど瞳や眉の僅かな変化に彼の感情は現れるのだ
私はもう一枚の地図を手繰り寄せて裏側を覗き見た
【宿泊での無料体験一覧】の文字が飛び込み彼の表情の意味を知る
坐禅に写経、写仏、瞑想、滝行、巡礼、茶道、華道、着物着付け等
正に寺院古来からの文化と言った感じのラインナップの中
私が体験したいと思うのは着物着付けくらいのものだが
彼が体験したいと言うなら俄然参加しようと思う
日本人に生まれて日本に住んでいるが写経なんて体験した事が無いし彼と一緒なら何だって楽しい
……………滝行以外は…………
チラリと隣を見れば未だ紙をガン見している彼が何に惹かれているのかは解らないが……………滝行は………………無いだろうと思う…………
「ねぇ沙夜子」
「はい」
緊張の面持ちで彼に視線を向ける
彼が何に興味を示したのか……それによってはキラキラの瞳を上回る拒否を示さねばならない
ゴクリと唾を飲み込み見詰め合ったのはほんの数秒の事だった
「これやりたい。」
「………そうしましょう」
……………滝行で無ければその他全ては同じに見える
私は即決で彼の瞳に賛同した