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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第81章 月を見上げて





満腹に成ったお腹を擦りながら店を後にする




暖簾を潜り外へ出れば冷たい冬の風が頬を撫でてアルコールで火照った身体を冷やした


赤提灯を背に彼が隣に立ち並び空を仰ぎ見るので

何気無く見上げた夜空には真ん丸な月が登っている


「…………月が綺麗ですね」


言葉其のままの意味で発した台詞に白い跡が空中に溶ける中

文豪、夏目漱石が"I love you"を日本語に訳すと"月が綺麗ですね"という言葉に成ると話したという逸話を思い出す


……………そんな事異世界人の彼は知らない事で私の心の中だけで彼への告白を思った時だった





「死んでも良いよ。」




返された台詞に思わず彼を見上げた先で細められた瞳と視線が交わる



文豪、二葉亭四迷が"あなたのものよ"という台詞を"死んでもいいわ"と訳した

彼の声が紡いだ台詞は"月が綺麗ですね"の返しの定番として頭の端にあった言葉だった


つまり彼は私の言葉の意味を知った上で「貴女のものだ」と返した事に成る



固まったまま只彼を見詰める私が漸く意味を理解する頃



「…………ほら帰るよ」


彼はそそくさと先に歩き出してしまって


「………っ待ってください!…………今のって……」



なんて背中を追った私に余裕を漂わせて振り返った彼は恐ろしい程に美しく妖艶に唇を開き




「沙夜子も俺のものでしょ?」


なんて小首を傾げるものだから



「はい!!!!死んでも良いですッ!!」


私は爆発しそうに煩い胸を抱えたまま軍隊張りの大声を返したのだった



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