ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第81章 月を見上げて
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私達は近所を適当に歩いて希望通り居酒屋に入った
レトロな建物は正に大衆居酒屋と言った雰囲気で綺麗な内装には程遠く高貴な彼には不釣り合いだが私の胸は踊っていた
酔っ払いで煩い店内は焼き鳥の煙とタバコで煙たくも何処か懐かしい
「……飲むでしょ?」
「勿論!!」
なんて頼んだハイボールとウイスキーが運ばれて来てグラスを合わせる
「焼き鳥も食べたいしお刺身も軟骨の唐揚げ!だし巻き玉子!ポテトフライ!鶏皮煎餅!あ!馬刺しですって!食べたい!」
「全部頼めば良いから落ち着きなよ。」
メニューを前にはしゃぐ私は20代も後半だ
…………こんなに食い意地の張った彼女で良いのかと思うが久々の居酒屋に胃袋は唸りを上げている
見慣れた字とは違うが知ったメニューの数々が魅惑的に私を誘惑し食い入る様にメニューを占領する私を彼はテーブルの向こうから静かに見ていた
………………本当に私と恋人なのだろうか………………
彼はお腹が空いたと発言したし二度目の夕飯を提案したのも彼だ
食欲そそるラインナップを前に何故あんなにも落ち着いたまま平然としていられるのだろうか………
なんて私が考え込んでいる内に彼が注文を済ませたらしく料理が次々運ばれて来る
「え………ほんまに全部頼んだんですか?」
「うん。」
「イルミさんが欲しい物は………?」
「俺ジャポンの料理詳しく無いしその調子だと日本と同じなんでしょ、沙夜子の方に居た時も注文は沙夜子がしてたじゃん。」
「そうですけど………なんかすみません」
「一緒に食べるし別に。」
言いながら焼き鳥をワイルドに頬張る彼の姿に腹の虫が鳴る
おずおずと手を伸ばし焼き鳥を頬張れば香ばしい炭の香りが鼻から抜けて思わず歓声を上げていた
「やばい!めっちゃ美味しい!!」
「うん。」
「この感じやと全部食べれますよ私!!」
「……あっそ。」
声高らかな宣言通りとまでは行かないが相当な量が胃袋へ消えて彼は彼で上品ながら綺麗に皿を空にした