ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第16章 彼女と比べる1年1ヶ月
鳴り止まない回線の鬱陶しさに苛立てば思わず力のコントロールを忘れて握り潰してしまった
「…………あ」
小さな電子端末は手の中でぐちゃぐちゃに成っていて面倒だが内線で執事を呼び出した
革貼りのソファーに身体を預けて溜息を付く
ぼんやりしていると浮かぶのは彼女の事ばかり
会いたい
会いたくて仕方がない
屈託の無い笑顔で自身を呼ぶ彼女に会いたい………
"イルミさん!"なんて自身を真っ直ぐに呼ぶ人物は何処にも居ないのだ
暫くしてやって来た執事は家族専用回線の小型機と最早ゴミの山に見える冊子をわざわざ持ってきた
「………俺そんなの頼んで無いよ?」
「ですが……キキョウ様が……」
「母親が何。………お前は俺の専属の筈だよね」
苛立ちをそのままに視線を向ければ執事は小刻みに身体を震わせる
汗を浮かべて真っ青な顔が余計に自身を苛立たせた
「…………ねぇ答えなよお前は誰の専属だっけ」
胸ぐらを掴んで持ち上げればその手からバサバサと冊子を落とす男
大理石に滑って冊子が滑る音がやけに響いた
酸素を求めて苦しそうに歪んだ口
「……イルミ様………っ……です……」
解ってる。この家の人間に何かを頼まれてしまえば執事は聞かざる負えない
もがいた手は自身の腕を掴み僅かな抵抗をする
「俺には触れるな………って教えなかったっけ」
「………ず……みませっ………」
みるみる血の気が引いて行く男を壁に叩き付けた
他人に触れられる事が不愉快で仕方がない
洗面へと足を運ぶ最中男は自身の背中に謝罪を投げ掛け部屋から出て行った