ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第16章 彼女と比べる1年1ヶ月
バタ付いた足音すら鬱陶しくて其れを消す様に蛇口を捻った
勢い良く流れ出した水で手を洗い流しながら彼女に触れられる事は最初から不快では無かった事を思い返す
(……………無自覚だっただけで本当に最初から………)
部屋へ戻れば先程落ちた冊子の山
見たが気に入らない程を装う事にして冊子を捲る
見知ったファミリーネーム
ウチに劣るにしても名の通った暗殺一家の娘達
暗殺の世界でトップのウチと計略結婚を謀る家は腐る程存在する
例え当主のキルアじゃ無くたってゾルディックの後ろ楯が欲しいのだ
勿論相手は俺の顔なんて知らないし人間性も人柄も知らず
只実家の為に、そしてそれに合意したゾルディックの子孫を残す為だけに身を売られる
捲れど捲れどうんざりする程全員同じに見える
この中に彼女の姿は無い
…………当然だけど。
彼女の顔が見たくて冊子を投げ捨てて異世界で使っていたスマホのアルバムを覗いた
此方で使っているスマホは仕事用、プライベート用合わせても一枚の写真も入っていない
指で彼女の頬をなぞってみても伝わるのは無機質な画面の感触で自傷染みた笑みが溢れる
…………彼女に触れたい…………
………そうだ…………